カネコアヤノ「光の方へ」
なんて最高なの。もっと早くに知ってたかった。
でもいつ聴いても、カネコアヤノにはいじらしい慕情が在る。
僕だけの命 チューブのチョコレート みたいに けち臭く
どうしたらこんな美しい言葉を綴れるんだろう?
壊れそうだよな 僕ら
次の夜には星を見上げたい
ちっぽけだからこそ もっと勝手になれる
もっとけち臭く、もっと勝手に生きてみようかなと思った。
ひたすら最高です。
aikoのプレイリスト 〜サブスク解禁に寄せて
現代の名工、邦楽界の宝、俺たちのaikoの音楽がいよいよ、サブスクリプションで解禁になりました。本当に革命だと思う。。
今の30代を中心に、この人の曲に心を救われていない女性はいないのではないかというくらい。それくらい日本女性(いや、男性もだな)の恋愛の拠り所となってきた巨匠ですが、
自分なんかまさにそのどストライク世代な訳で。
aikoの曲はどれにも必ず熱狂的なファンがついているので、
この記事では、超超超個人的な理由に基づいた好きな曲をつらつらあげていくこととします。
サブスクで本当に簡単に聴けるから、流しながら、そして歌詞を読みながら(ここ重要)ぜひどうぞ。
- 発売日: 2020/02/26
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最初に出すにはあまりに有名すぎるけど、これこそaikoの真骨頂だと思うので。。
わたしは、aikoの楽曲は現代の演歌だと思っている。
現代にも演歌はありますが、あくまで、演歌の世界観をそのままJ-popに昇華したのがaiko、という意味で。
人を愛した女の怨念、執念、熱情、みたいなのがめらめらに積もっていて、これを演歌と言わずしてなんと表現したら良いのだろう。
歌っている人のキャラクターゆえに可愛い、切ない、いじらしいのだけれど、冷静に読むとものすごい怖い歌詞なんだよね。
「明日あなたがいなくなって 明後日心変わりして
いつか嫌いになられたら?」
あたしのこの余計な考えを今すぐとっぱらってよ
もう離しはしないと約束しなくても良いから
不安で眠れない夜 隣にいてください
今夜そうしてください
自分がもしこの気持ちを、不意に相手から向けられたとしたらぞっとしてしまう。
えっえっどうしたの?wってなっちゃう。ホラーだよ。
でも一直線に恋愛したらそれくらいの思いを人は心の中に滾らせてしまうし、
それを臆することなく歌えるから、この人は天下をとったのであって。
そもそも「愛の病」っていうタイトルがもうヤバい(最上級の褒め言葉です)
こんな美しい歌詞があるんだと、未熟ながら感化されたことを今でも覚えている。愛を語らずして愛を歌う、それがアイスクリームだなんて、と。
中学生の頃、一番躍起になって聴いていたaikoの曲。たぶん何かのカップリングなんだけど、仲の良い友人が大好きなんだよねーとMD(!)にダビングしてくれて、それからずっと気に入っていた。
どんな時代だろうと、どの性別だろうと、この歌詞に共感しない10代がどこに居よう。
シンセベースの軽めの音が王道ポップス感満載で、私たち世代にとっての郷愁と切なさをさらに引き立ててくれる。
限られたMDとかCDとかテープとか、深夜のラジオとか、交換日記とか、好きな先輩だのクラスの男子だの、友達や部活の苦しさ、大人になっていく心と身体、そういうのを後生大事に抱えながら一生懸命聴き込んでいたあの頃の匂いが立ち上ってくるようで、今聴いてもぐっとくる。
「エモい」の一言では絶対まとめたくない、でもそういう頃合いの空気を、今でも吸うことができる曲。
タイトルが内容に全然関係ないのも良い。アスパラ。
大学の頃、一年だけaikoコピーの企画バンドをやっていた。その時に初めて演った、思い出の一曲。
そしてこの曲はライブアレンジの方が抜群に良いので、ぜひ「まとめII」の方のバージョンで聴いてほしい。
夏の爽やかさと疾走感、それをキーボードだけでこんなに美しく表現できるイントロが他にあろうか。。
そのバンドは、普段メタルとかをやっているゴリゴリに技巧派な先輩たちが「aikoやりたい!」となってたまたま誘ってもらったんだけれど、
演奏の上手な人たちが演るaikoは本当に本当にそれはもう本当に、音だけで酔っ払うくらい上手で格好良かったいうことを声に出して言いたい。
というか、そういう曲をはい!わたしJ-popです!みたいな顔して平然と出してくるaikoがまず凄いんだよな。
メロディーラインもアレンジも素晴らしいんです。この曲は。
ちなみにその先輩たちは常々、J-popの中でもaikoとジャニーズの曲はマジでかっこいいしやるのが難しい、と言っていた。
確かに。
特にジャニーズのデビュー曲は尋常でないくらいの気合いが入ってるから、アイドルソングを普段聴かないような人たちでもびっくりするような超絶リフ入ってるんだよ、みたいなことも教えてもらったりした。
そういう、よくある「その手のものを馬鹿にする人達」なんかとは全然違って、良いものを良いとちゃんとした根拠の下で言い切れる人たちと一緒にやれたことは今でも自分の財産になっている。
あと練習終わりに毎日どこかに連れて行ってくれて、みんなで作った鍋とか、夜な夜な観た幽遊白書とか東京ラブストーリーとか、初めて教えてもらった知らないお酒の味とか、洋楽とか、今思えば年齢も大して変わらなかったんだけど、もうすぐ社会人になる先輩たちと一緒に過ごす日々は、20歳そこらの自分にはあまりにきらきらした毎日だった。
そういう思い出も込みで、忘れられない曲なのかもしれない。
何よりこれは、歌っていて死ぬほど気持ちよかった。ライブでお客さんが絶対に乗ってくれる、不思議な浮遊感みたいなのもある曲だった。
女の子にTシャツ、ダメージジーンズ、スニーカー、ニットキャップ、ってのにバチバチに決まるやつ。最高。
せっかくなので当時、ステージにはちゃんとそれで立ちました。悔いなし。
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これも、aikoバンドで演ったので個人的に思い入れのある一曲。
全体を通してテンポの取り方がものすごく難しくて、特にバンドでやると百発百中〝走る〟。でもライブDVDとか観てると本人たちのバンドもじゅうぶん走ってるので、それを狙ってやってる感もあるよなー。何よりそういう紙一重の疾走感が魅力。
片想いを歌わせたら天下一品、それがaikoだけれども、それにしたってこんなに苦しいのは何故。ギターのリフがまたものすごく良い。苦しすぎる。麻薬。
初収録アルバム「暁のラブレター」のタイトル通り、夜中を明けて行き場のないどうしようもないものすごい愛とか恋、がちゃんと音楽という形になっていると思う。
ちなみに暁のラブレターを聴くなら、一曲目の「熱」→「彼の落書き」の順でちゃんと聴いてください。こんなに完璧な組曲をわたしは他に知らない。
(ただサブスクだと、2曲の繋ぎ目が微妙に切れてたのが悔やまれるところ。完璧な組曲を知りたければ、是非アルバムを買ってください。本当に本当に完璧なので。しつこいようだけど。w)
これを聴いて帰ったあの日の朝を、今もありありと思い出す。
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タイトルの由来は、当時のゲームボーイアドバンス(懐かしい、、)から。
「電池が少なくなると横のちっちゃいランプが赤くなる。
熱中していて「まだ、大丈夫やろ」って思ってやっていると、すごくいいところでブチンって切れてしまう」
ことから、ひいては恋愛の終わりかけを歌っている。
もう、こういうaikoの発想が好きなんですわたしは。。
確かにそうだ、行ける行けるまだ大丈夫、と思っているうちに、気持ちが突然切れてしまうことは往々にしてある。
この曲の真骨頂は、
たまにあたしを思い出してね
そして小さな溜息と
肩を落とし切なくなってね
この歌詞だと思う。ホラー②…。
このaikoがaikoたる所以、女の怨念、情念よ。。すっごい気持ちわかるような気もするけど、冷静に考えるとすっごい怖い。いや冷静に考えなくても怖い。
でもこういうことを書けてしまうから、aikoのフォロワーが絶えることはないんだと思う。
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数多くあるaikoの楽曲の中で、わたしのベスト1は恐らくこれ。
何が?と言われるとうまく言えないんだけど、とりあえず、イントロからもう優勝。
それから、この曲の歌詞自体はただの回顧と軽い意思表明でしかないのに、
なぜかこの主人公の詳細なストーリーが聴く人の脳内にちゃんと浮かんでくるという不思議現象があるように思う。
若い恋愛はいつも背伸びばかりで、ゆえに先に立たない後悔をする。そういう経験が少なからず誰にでもあるから、きっとみんなの心に物語が生まれるのだろうな。
とにかくもう絶対に戻ってこないけど、一生かけても守りたかった恋愛、その始まりから終わりまでがありありと浮かんできて、ひとりひとりの心に寄り添う。
時間が経って、この子はもう一度その人に会いに行くことはあるんだろうか?
会いになんかいかなくてもいいほどの上書きを、誰かと共に出来る未来でありますように。
30代になった今は、ふとそんなことを思った。
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これを初めて聴いたのは比較的最近じゃないかな。
久しぶりにアルバムを買って聴いて、あーやっぱり良いわとしみじみ思った記憶がある。
このイントロ。イントロから苦しいって、aikoなんだよなーやっぱり。じゃんじゃんばりばりバンドサウンドに間奏のストリングス、くるくる踊り狂うaikoの画が容易に思い浮かんで心地よい。
この曲の歌詞は、読み進めるごとにその内実がわかっていく構成になっている。さすが。最後にちゃんと、aikoらしい結末がある。
やっぱり怨念とか、執念みたいなものが滲んでいる歌詞なんだけど、
とりあえずこれは最後の
ではさようなら
で全て勝利、みたいなところがあると思う。そのワンフレーズだけでわたしは痺れた。最高よ。
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ワンフレーズで痺れたといえば、これもです。
これは歌い出しの
暑いっていうかこの部屋には思い出が多すぎる
でもうやられたーって感じだった。
ていうか、で切り返す内容が、一見全然「暑い」と関係ないんだもん。歌詞っていうか、心の声そのものなんだよなこれは。
アルバム「泡のような愛だった」は比較的大人な雰囲気の曲が多くて、aikoというアーティスト自体の成熟を感じた一枚でもある。
ちなみに初めて聴いた時はこの曲が自分にバチッと来るような人生の瞬間だったので、本当に素直に「え、これわたしのこと歌ってる?」と思ったことを覚えている。
aikoを聴いていると必ず一度はそういう経験をするから、だからaikoは、20年一線を走り続けている。
これはあなたの歌 嫌なあなたの歌
そんな風に歌える人が他にいるかね。いないんだよね。。
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これをどう取るかは聴き手次第だと思うんだけど、アルバム「泡のような愛だった」同様、わたしはこれをリリースした前後から感じていることがありまして。。
aiko、いつから不倫とか浮気とかの曲、書くようになった?
…aikoが大人になったのか、わたしが大人になったのかは、わからないです。
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一番最近に聴いた曲です。
これだってさーもうさー怨念なんだよ。怖いんだよ。ていうかこれはもう、呪いなんだよね。まじない。
「君に良いことがあるように」という、ポジティブな呪いの曲なんだと思う。
一歩間違えれば危ない思想だけれど、恋愛なんてそういう、おかしなことさえも君が言えば全て善、というものなのは誰もが知る通りで。
そういう日常に潜む紙一重の幸せを、最近のaikoはよく歌う。
この曲の素晴らしいところは、最後の大サビです。
最後にやっと、「君に良いことがあるように」の繰り返しの呪いが溶ける瞬間がやってくる。
延長戦を繰り返して
やっと見えた本当の痛みは
出会った頃より悲しくて
寂しくて大切で
君に良いことがあるように
今日は赤いストローさしてあげる
あれ?でも気がつくと、これは120%の幸せなのだろうか?
そういう綺麗事だけでない毒っ気があるから、わたしは多分まだまだaikoの音楽を聴き続けるんだと思う。
心が震えた瞬間に、思い立ったたちまちに、必ず自分の心に寄り添う一曲があって、たった数タップでそれが聴けてしまう。
サブスクで気軽に享受できる幸せを噛みしめてるこの頃なのでした。
誰が何と言おうと、aikoはいつだって最高。
今泉力哉「愛がなんだ」
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山田詠美 「風味絶佳」
鬼のように久方ぶりの更新。
皆さんお元気でいらっしゃいましたか。わたしはすこぶる元気でした。
あいも変わらずだらだらと本とか映画とか音楽を手にしては穏やかに生かされている毎日。
久しぶりですが、何の前触れもなく本の感想を書き連ねたいと思います。
山田詠美「風味絶佳」を読んだのはもう8年くらい前(!)、ちょうど「シュガーアンドスパイス」として映画化されたとき。
あの映画はとても印象に残っていて、大変好きで未だにたまに観たくなる。
若い男の子にとっての恋愛、女性が恋人に一生求め続ける心づくし、人が人を好きでいる間に起こる悲喜こもごも。そういう全てが‘シュガー’と‘スパイス’で、その切なさをとてもよく描いているとおもうのです。あの映画の沢尻エリカの可愛さときたら!
さて、最近また思うところがあってこの本を読み返してみた。
一番好きな作品、「間食」。最高に最低な男の子の恋愛を書いていながら、読み進めるとどうしても愛おしくなってしまう。
この作品の何が素晴らしいって、恋愛したときに立ち上る‘いつくしむ、可愛がる、愛情を注ぐ’という目一杯はみだすような感情の表現。本当に上手。
主人公が年下の女子大生・花ちゃんに対して思う、とにかく可愛くて可愛くて仕方ない、食べてしまいたいくらい愛おしいという可愛がりの感覚。
自分は女性だからその全てをまま共感することは出来てないのだろうけど、それにしたってこの気持ちはよくわかる。
よくわかるからこそ、その愛情がどんなにいびつで二股かけちゃってようが、どうしても主人公を憎むことが出来ないのです。
丸くてやわらかくてにこにこしていて、とにかく可愛い花。
デート中に中華屋さんの豚の人形を見かけて、「花に似ている」というと小さなポットが湯だったように怒って見せる。頬を膨らますのが愛おしくて、それをからかいながらなだめるやりとりがまた何とも微笑ましい。
もうここの表現だけで、この作品オールオッケーみたいなところがあるとおもったんだよな。
この作品で重要なのは寺内という主人公の同僚なのだけれど、これがまた素晴らしい。
誰かに可愛がられ、誰かを可愛がる、(主人公はその方向を完全に見誤っているけれど)人を愛するということは‘慈しむ’ことの重層なのだと思わされる。
この本を読んでいるといつも、食事がしたくなります。
1人でも、2人でも。
おなかすいたなー。
さすが大御所の長く読まれる短編集、と改めて感じ入ったのでありました。
- 作者: 山田詠美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/05/09
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綿矢りさ「蹴りたい背中」
科学やテクノロジーが進歩すればするほど、それに伴う人間のこころをいかにしていくかという問題になる。
そのときに役立つのが、人文科学なのです。
理系分野が発展すればするほど、本来人文とは発展し必要とされていくものだということを断言します。
というようなことを、大学入学当時の学部長が言っていたのをよく覚えている。
文学は虚学というよくある説を否定するための言葉でもあったのだが、別に技術が進歩しなくても、その言葉の意味を強く感じることが最近よくある。
さびしさは鳴る。
耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。
細長く、細長く。
紙を裂く耳障りな音は、孤独の音を消してくれる。
気怠げに見せてくれたりもするしね。
綿矢りさ「蹴りたい背中」の書き出しは、これ以上も以下もない名文だと思う。
この言い回しにぴったりとはまる感情が、確かにある。
今この自分だけがこの孤独に在るのではないということを感じられるだけで、少し楽になろうとできたりする。
胸を締め付けるという筋肉の動きは、生きているうちにいったい何度あることなのかなー。
- 作者: 綿矢りさ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/04/05
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今一度「ナラタージュ」/島本理生
島本理生「ナラタージュ」で検索をかけてこのブログに行き着いてくださる方が結構多いようなので、
畏れ多くも再掲。
島本理生「ナラタージュ」 ※核心まで激しくネタバレ - ぶんかけいのひびのきろく
発売から結構経っているし、この記事自体を書いてからも結構経っているのですが、
紹介用リンクから本を購入してくださった方もいらして(初体験ですwありがとうございます)
やはりずっと読み継がれる作品というのは読み継がれるのだなあと。
わたしもちらと読み直しましたが、やはりあの独特の読後感と何ともいえない苦しさにまたやられてしまいました。
読むたびに響く言葉が違うんだけれど、今回は葉山先生の
「ただ、彼と一緒に居るほうが君は幸せだと思ったんだ。
僕はね、いつだって君が心配なんだ。
苦しんだり傷ついたりしないで生きているかどうか。
それが守られるなら僕の独占欲なんてどうでもいいし執着をみせないことを
薄情だと取られてもかまわない。」
この言葉がどーんときました。
薄情でかまわないと言えるほどの気持ちが、どれほど薄情でない愛情だったか。
今ならとても解る気がしたのでした。
- 作者: 島本理生
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2008/02/01
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