愛の夢とか/川上未映子

結構前に、未映子嬢「愛の夢とか」読了しました。
こういう感覚的短編が、この作家さんには合っている様な気がするよ。


いちばん好きだった、「アイスクリーム熱」。
なぜか頭の中で、主人公の女の子が読者モデルのAMOちゃんでドラマ再生された。アイスクリームだからか、と後から気付いた(AMOちゃんのブログの名前はあもすくりーむ)
でも、ちょうどそれくらいの年端の女の子の、勢いと高揚感の心持と若いゆえの(ほほえましい)軽薄さが、なんともこの作品の主人公とよく合うなあとも思う。


結局なんだったんだろう、と思う、瞬間的な浮ついた恋心。
アイスクリームのようにとてつもなく甘く、はかない時間の滋養。といえば短絡的すぎるかも知れないけど、でもこの若い恋愛の浮揚感覚みたいなものを、うまく表現していてとても好きだった。


そしてたぶん、この2人がもっと年齢を重ねていればきっとセックスしていただろうし、付き合うか否かは成り行き任せだけど、こんな乾燥した感じの緊迫感はなかったはずだ。
コミュニケーションの種類としては濃厚で交わり(身体的なではなく)の深いもののほうが断然いいはずなのに、実際深く心に刻まれるのは、友人以上の未遂に終わった関係のほうだったりする。
そういうことを、ふと思わされた。


余談だけれど、これを読んだときのシチュエーションが個人的にとてもいいものでした。
あの照明の感じとか時間の流れ方とか、なんというかすべて完璧すぎてこの先二度とないだろうなっていうくらい完全な幸福の状態を保った空間で読書をした。
他の人から観たらなんでもない場面だけど、わたしとしてはとても良い時間だったんだよなあ。
そんな補正もあって、この本はとても好きです。


そもそもそんな読書状態こそ、アイスクリーム熱的なものなのだけれど。




愛の夢とか

愛の夢とか