おかざき真里「サプリ」

このあいだドラマの方のサプリの話を書いていたら、すっかり原作を読み返したい気持ちになってきた。というわけで、早速借りてきて読みました。
ドラマとは全然違う話なんだよねこれ。仕事というものが大前提としてあって、それを軸にどう生きていくか、というおはなし。


サプリ (1) (FC (335))

サプリ (1) (FC (335))



女性の社会進出が叫ばれて久しいわけだけれど、じゃあ何を以ってして働く女性のゴールを決めるのか。決まりきった答えのない中に、前例のない中に、自分だけの何かを模索すべく必死に働く現代女性の在り方とは。
綺麗事だけじゃない、むしろ苦しいことばっかり、なんだかんだ女の人が社会で働くということはまだまだ……な点の多いこの日本で、仕事とは恋愛とは結婚とは友人とはお金とは人生とは、何か。

わたくし働いて年次は3年目になりますが、読んでいてあまりに共感できることだらけで驚いた。
代理店の話だし、元々この作品は他のどの「働く女子系お仕事漫画」よりも‘自意識’の強いそれである。
わたしが言うのもなんだが、マスコミの女子ってこういう感じが多いよねっていう。だからなのかもしれないが、それにしたって、結局一生懸命に働くことで生まれてくる現実と理想の軋轢、みたいなものは誰の心の中にもあるものなのだなと実感する。

ミズホさんの言っていた、
わたしたち欲しいものはなんでも手に入れてきたじゃない。仕事も、お金も、洋服もおいしいものも人脈も何もかも。なのにたったひとつ、どうして恋愛で全てが決まってしまうの?
そんなの、悔しいじゃない。
みたいな台詞がすごく刺さる。超自意識ぎらぎらな嫌な発言かもしれないけど、言い得て妙だ。

恋愛とか結婚とかは、当人が好きなように、好きなときに、好きなやり方でやればいいものだと心底おもう。誰の指図も受けるべきものじゃない。
しっかり地に足つけて立って歩いて進んでいる人間には、そういう芯の強さがある。ミナミにも柚木さんにも、ミズホさんにも渡辺にも、それがきちんとある。
あっちの女の子たち、とは明確に違うそれが、読者のわたしたちを強く勇気づけてくれる。カタルシスになる。


読み進めながら、ふと、徳田秋声の「なまけもの」を思い出した。
意思があり、軸足がある限り、人はどうにだって進んでいける。そしてそれを有するのは、大抵女性のほうだったりする。


男女の違いをどうこう叫ぶのはあまり好きではないけれど、しかし女性の一本筋の通った強さ、賢さ、みたいなものは、凛としてとても心地がよいなと思った作品だった。
読んでいて落ちこむこともあるけど、救いを求めて、つかまるものを求めて、またいつか読みたいなと思う。

選択権を得るためにわたしたちは働いているのかもしれない、という結論は、とてもすっきりとしていた。